エンジニアとして成長できるかどうかは、本人の努力量だけでは決まりません。実機に触れる環境があるか。一緒に走る仲間がいるか。挑戦のコストを会社が持ってくれるか。このどれかが欠けた瞬間に、学習は「業務外に1人で耐えるもの」になってしまいます。
SI事業部(インフラ)は、そこで制度を作りました。ネットワークとサーバーの検証環境に約300万円を投じ、教育制度名「ゼロ層会」として実機を使った勉強会と4〜5人のチーム演習を運営。資格は受験費用を会社が負担しています。
ただし、制度は「あります」と並べただけでは意味がありません。実際に使っているエンジニアにとって、それは機能しているのか。今回は人事の竹内が、エンジニア3名(龍堀・加藤・長谷川)と営業の早川に話を聞きました。うまくいっていることも、これからの課題も、そのままお伝えします。(人事部:竹内)
教育制度「ゼロ層会」について
ゼロ層会とは、実機環境を使った勉強会と、チーム演習会、資格学習会、平日夜に開催しているリモートでの教育制度です。
役職や経験年数、プロジェクト先の違いにかかわらず、フラットに学び合う場をつくることを狙いとしています。かつては全社一律の集合研修を実施していましたが、現在はエンジニア自身が主体となって動かす形に移行しました。
受け身で研修をこなすのではなく、自分が学びたい領域に手を挙げて進められる制度になっています。会社全体のインフラ技術力を底上げすることを目的に設けられた制度です。
インフラエンジニアの学習は、環境が重要
インフラエンジニアの学習で最大のネックになるのが、手を動かせるオンプレ環境です。プロジェクト先の本番環境は当然ながら自由に触れません。参考書と動画だけでは、機器の前に立ったときの感覚は身につきにくいのが実情です。
そこで当社は、ネットワーク機器とサーバーによるオンプレミス検証環境を自社に構築しました。投資額は約300万円。設計・構築・検証から切り戻しまで、壊すことを恐れずに試せる環境です。
弊社のエンジニアであれば、いつでも活用できます。エンジニア同士で集まり、実機に触れながら、構築や検証を行う機会も設けています。勉強会への参加は任意ですが、できる限り多くのエンジニアに参加していただきたいと考えています。
4~5人チームでの設計・構築演習|やりたい分野を選択できる
ゼロ層会の中心にあるのが、チーム単位の設計・構築演習です。参加は任意。4〜5人程度でチームを組み、自分が進みたい分野の演習に取り組みます。
・クラウド構築演習:設計
・ ネットワーク構築演習:VPN、SDN
・ サーバ構築①演習:仮想基盤構築
・ サーバ構築②演習:DB環境構築
会社が決めたカリキュラムを全員が同じ順番で消化するのではなく、自身のやりたい分野から進めていくのが特徴です。複数チームを掛け持ちしているメンバーもいます。
入社1年でチーム演習のリーダーへ。「1人の力は、たかが知れている」
竹内:加藤さんは2つのチームに所属して、うち1つではリーダーを任されていますよね。始まって2か月ほどですが、やってみてどうですか?
加藤:「これまではリーダーに頼っていた部分が、そのまま自分に返ってきていると感じます。作業をするだけではなく、人がやる作業を準備して、タスクを振る。自分の力が及ばないなと思う場面がぽろぽろ出てきました」
竹内:大変そうですね。それでも続けている中で、学びになっている部分はありますか?
加藤:「以前は何でもかんでも自分でやればいい、という考えがありました。でもチームで動いてタスクを振るようになって、1人の力なんてたかが知れているなと。チームで動いたほうが、単純な人数分以上の力になる。チームビルディングの力を大きく感じています」
プロジェクトと両立できる設計になっている
竹内:気になるのはプロジェクト業務との両立です。加藤さんはリーダー業務に加えて、エンジニア全体ミーティングの司会も担当予定ですよね。バランスはどう取っているんですか?
加藤:「チームごとに週1回の定例があるので、僕は週2回。そのための宿題や課題は発生しますが、メインはそれくらいです。『時間が全然ない』となるようなことはない気がしています」
龍堀:「自分は土日もずっと何かしているんですけど、加藤さんは『暇だよ』としか言ってこないんですよ。何が違うんだろうと、日頃から聞いています」
加藤:「本当に忙しくないんです。映画も見に行きますし、土日も遊び回っていますね」プロジェクトで成果を出しながら、無理なく継続できる負荷に収めることを前提に運営しています。
資格制度 ― 受験費用は会社負担。走っている人が、見える
受験費用を会社が負担する
資格取得にあたっては、受験費用を会社が負担しています。インフラ領域の資格は受験料が高額になりがちで、それ自体が挑戦のハードルになります。金銭的な理由で「受けたいけれど後回し」にならないよう、会社が持つ形にしました。
資格は、経験の浅いうちに自分の技術を客観的に示せる数少ない手段でもあります。挑戦の回数を増やせること自体に価値があると考えています。
また、会社が指定する資格を取得した場合は、資格手当も支給されます。
◆受験費会社負担一覧
【情報処理技術者・国家資格】
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- 情報セキュリティマネジメント試験
- ネットワークスペシャリスト試験
- 情報処理安全確保支援士試験
【ネットワーク・Linux系】
- Cisco Certified Network Associate(CCNA)
- Linux技術者認定試験 LinuC/LPIC レベル1
- Linux技術者認定試験 LinuC/LPIC 201・202
- Linux技術者認定試験 LinuC/LPIC 300・303・304
【AWS認定|Associate】
- SAA-C03 AWS Certified Solutions Architect – Associate
- SOA-C03 AWS Certified CloudOps Engineer – Associate
- DVA-C03 AWS Certified Developer – Associate
- DEA-C01 AWS Certified Data Engineer – Associate
- MLA-C01 AWS Certified Machine Learning Engineer – Associate
【AWS認定|Professional】
- SAP-C02 AWS Certified Solutions Architect – Professional
- DOP-C02 AWS Certified DevOps Engineer – Professional
- AIP-C01 AWS Certified Generative AI Developer – Professional
【AWS認定|Specialty】
- SCS-C03 AWS Certified Security – Specialty
- ANS-C01 AWS Certified Advanced Networking – Specialty
【Microsoft Azure|Associate】
- AZ-104 Microsoft Certified: Azure Administrator Associate
- AZ-204 Microsoft Certified: Azure Developer Associate
- AZ-500 Microsoft Certified: Azure Security Engineer Associate
- AZ-700 Microsoft Certified: Azure Network Engineer Associate
【Microsoft Azure|Expert】
- AZ-305 Microsoft Certified: Azure Solutions Architect Expert
- AZ-400 Microsoft Certified: DevOps Engineer Expert
自信がなかったから、まず目に見える証明書がほしかった。
竹内:龍堀さんは入社後、短い期間で複数の資格を取られていますよね。何をモチベーションにそこまで頑張れたんですか?
龍堀:「エンジニアとしての自分に、あまり自信がなかったんです。だからまず形だけでも、エンジニアとして誇れるものを取得したかった。手っ取り早い手段のひとつが資格でした。また、資格を取得することで基礎知識が身に付き、早期にステップしていける可能性があります。」
◆龍堀さんが取得した資格
・26年3月14日:基本情報技術者試験
・26年3月21日:情報セキュリティマネジメント試験
・26年2月28日:LPICレベル1
・26年4月18日:LPICレベル2
・26年5月9日:LPICレベル3
やる気のあるエンジニアが、隣にいる
竹内:勉強会で資格の勉強そのものをしていたわけではないですよね。参加していて良かったことはありますか?
龍堀:「参加するだけでも、やる気のある人たちに触れられるんです。本気のエンジニアを目の当たりにできたことが、資格取得や、1人のエンジニアとして成長していくモチベーションにつながりました。この環境があったからこそだと思います」
学びを孤独にしない ― イベントとDiscord
「1人でやっている感覚」から生まれたDiscord
竹内:社内のDiscordは龍堀さんの発案ですよね。やろうと思ったきっかけを教えてください。
龍堀:「メンターや企画チームの準備をしている中で、自分1人でやっているな、という孤独感があったんです。モチベーションにも波が出る。でも周りを見れば、演習もメンターも資格勉強も、一緒に頑張っているエンジニアがたくさんいる。それなのにこの感情が出てしまうのは、もったいないなと思ったんです」
同じ気持ちのエンジニアは少なくないはず。その仮説から立ち上がったのが、学習の進捗や悩みを共有する場です。現在は社員同士の交流を促すコミュニケーションツールとしても活用しています。
技術だけでは、つながらない。だからイベントがある
プロジェクト先が分かれるため、社内の顔と名前が一致しにくくなります。当社では、技術の場とは別に交流の機会を用意しています。
・ SI総会:2か月に1度、事業部のメンバーが集まる場。会社の方針共有に加え、カードゲームやアイスブレイクなどの交流企画も実施
・バースデイイベント:その月に誕生日を迎えるメンバーをお祝い
・ オータムイベント:仕事を離れて話せる場として開催
・ 年1回の表彰:1年間の貢献や成長を、全社で称える
竹内:長谷川さんは先日のSI総会が初参加でしたね。感想はいかがでしたか?
長谷川:「思ったより参加人数が多くて、正直まだ顔と名前が一致しきっていません。それでもカードゲームやアイスブレイクの時間があって、仕事の話じゃなくても1対1でコミュニケーションが取れる、いい機会でした」
実際に長谷川は、同じテーブルになった先輩と地元やアルバイト先が同じだと判明し、プロジェクトの話も聞けたと言います。
竹内:加藤さんはどうでしたか?
加藤 「めちゃくちゃ良かったです。人事の方や営業の方の話を聞く機会って、意外とないんですよ。日々の1on1は、どうしても自分に対する話が中心になりますし。エンジニアという大きなくくりに対して、人事や営業がどう考えているのか、裏でどんな苦労をしているのか。そこを理解できる、いい機会だと思いました」
竹内:龍堀さんは、顔と名前を一致させるためにかなり動いていましたよね。
龍堀:「一致させようと必死で、あまり回れなかったのが正直なところです。1人ひとりメモを取りながら話して、終わった後にDMも送らせてもらいました。向こうにも自分を覚えてもらえるように」
交流企画は現在、エンジニア自身の企画チームが主体となって内容をアップデート中です。
正直に言うと、課題もあります
竹内:制度が回り始めた一方で、これからこうしていきたいという部分はありますか?
加藤:「新しい制度やイベントが始まっても、メンバーが固定されてきているなと感じています。常連ばかりで、新しく入った人はお断りですよ、という雰囲気になるのだけは避けたい。全員が参加できるように運営にしていきたいです」
竹内:長谷川さんは入社1か月の立場から、ミーティングやDiscordについてどう感じますか?
長谷川:「案内は見ているので、どんな話をするかは想像がつきます。ただ、前回からの引き継ぎなのか、新規の議題なのかが分かりにくい。新規でないなら、自分が入っても分からないんじゃないかと思ってしまう。そこが明確になっていると参加しやすいと思います」
長谷川:「Discordも、テキストはそこまで抵抗がないんですが、通話に入るとなると目的が一致するのかが分からなくて。顔と名前が一致していないこともあって、入らない選択をしてしまいます。月1回でもフリートークの時間があれば、楽しくコミュニケーションが取れるのかなと思います」
龍堀:「めちゃくちゃありがたい意見です。新しく入った方にどう入ってきてもらうかは、まさに試行錯誤したかったところなので、ぜひ取り入れさせてください」
この意見はその場で企画側に共有され、告知方法の改善と、月1回のフリートーク回の設置が検討されています。制度は完成品ではなく、入ってきた人の声で作り替えていくもの。そう考えています。
イベントの写真まとめ
これから目指す体制
竹内:早川さんから見て、今後の方向性はどうでしょうか。
早川:「技術力アップを掲げている以上、エンジニア一人ひとりの力が欠かせません。社内が活性化する仕組みは、常に考え続けなければいけないと思っています」
竹内:龍堀さんからは、体制についての提案も出ていますよね。
龍堀:「今はエンジニアが営業にぶら下がる形になっている部分があると思っていて。管理役となるエンジニアが複数のメンバーをフォローして、その先に営業がいる。そういう体制でもいいのかなと考えています。ただ、エンジニアと営業の関係が希薄になる懸念もあるので、双方が円滑に連携できるラインを維持・強化する工夫はセットで必要です」
早川:「エンジニアがエンジニアの業務上の悩みやキャリア、勉強を後押ししていくことで、より良い体制を作れると考えています。」
エンジニアが役職を持ち、主体的に組織づくりに関われる制度をどうつくるか。現在進行形で議論が続いています。
最後に ― なぜ、ここまで育成に投資するのか
私たちのビジョンは「時代を動かすインフラを、生み出す」。AIの普及でデータセンターの需要は拡大を続け、ランサムウェア攻撃をはじめとする脅威への備えも経営課題になっています。サーバー、ネットワーク、クラウド、セキュリティ。需要は伸び続ける一方で、それを担える技術者は足りていません。
安定した基盤があってこそ、企業は新たな挑戦に踏み出せる。その土台を担うのが私たちの役割です。そしてそれを実現するのは、制度でも設備でもなく、そこで学び続けるエンジニア一人ひとりです。だから、育成に投資しています。
ゼロ層会も、Discordも、イベント企画も、そこにいるエンジニアが「こうしたい」と言い出したところから生まれています。与えられた研修をこなすのではなく、自分たちで学ぶ環境をつくっていきたい。実機に触れられる場所で、資格も実力も一緒に積み上げていきたい。そう考えるエンジニアの方に、ぜひ来ていただきたいと思っています。